図の説明: お客様が片手に両側に足が長く並んだ細長い部品(PIC16F877A-I/P)を、もう片手に四方に足がある平たい四角い部品(PIC16F877A-I/PT)を持って「名前がまったく同じだから同じものですよね?」と尋ねます。赤いエプロンをした女性スタッフが「スラッシュの後ろを見てください。/Pは挿入型のPDIP、/PTは平たいTQFPです!」と答えます。
Microchipのマイコンは大きくPICとAVRの2系統に分かれます。同じチップでも注文品番の末尾がPIC16F877A-I/P・PIC16F877A-I/PT・ATmega328P-AU・ATmega328P-PUのように何種類もあり、末尾の文字はほとんどが温度グレード、パッケージ(本体の形)、梱包(チューブ・トレイ・リール)を表します。
この記事はMicrochipデータシートのProduct Identification System(PIC・新AVR)とOrdering Information(旧Atmel AVR)の欄だけをもとにまとめました。旧Atmel式AVRは文字の解説図がないため、注文表を突き合わせて読み取ったものには[推定]と表示しています。
この記事はMicrochipの8ビットマイコン(PIC・AVR)だけを扱います。STのSTM32品番は別にまとめています。
https://eguro.kr/ja/board/view.html?b=library&id=87
PDIP・SOIC・TQFP・QFNなどのパッケージ名になじみがなければ、パッケージの記事を先にご覧ください。
PICのデータシートはすべて同じ書式“PART NO. X /XX XXX”を使います — デバイス → 温度 → パッケージ → パターン。Tはハイフンの前、デバイス名のすぐ後ろに付きます(PIC12F675T-I/SN)。末尾にPIC16F873A-I/P 301のように3桁の数字がさらに付くと、工場でプログラムを書き込むQTPパターン番号で、通常の品番にはありません(DS39582C・DS41190G)。
PIC12・PIC16・PIC18の数字や877・675などの番号の意味はProduct Identification Systemに出てこないため、この記事では解説しません。
| 文字 | 温度範囲 | 名称 | 記載のあるデータシート |
|---|---|---|---|
| (なし) | 0~70℃ | Commercial | 旧PIC16F877のみ |
| I | −40~85℃ | Industrial | すべてのPIC・AVR128DA |
| E | −40~125℃ | Extended | PIC12F675 · PIC18F4550 · PIC16F18446 · AVR128DA |
PIC16F87XAデータシート(DS39582C 231ページ)の温度欄にはI(−40~85℃)だけがあります。お客様が「125℃版の877A」を探していても、そのような注文コードはこのデータシートにありません。逆にPIC12F675-E/PのようにEがあるチップはIとEが別の品番なので、Iを使っていたところにEを、またはその逆を送るときは事前にお客様に確認します。
| 文字 | パッケージ | 例 |
|---|---|---|
| P | PDIP(挿入型) | PIC16F877A-I/P · PIC12F675-I/P |
| SP | Skinny PDIP(幅300mil) | PIC16F876A-I/SP · AVR128DA28-I/SP |
| SO | SOIC — 広幅7.50mm | PIC16F18446-I/SO · AVR128DA28-I/SO |
| SN | SOIC 8ピン — 狭幅3.90mm | PIC12F675-I/SN |
| SL | SOIC 14ピン — 狭幅3.90mm | PIC16F18426-I/SL |
| SS | SSOP (5.30mm) | PIC16F18446-I/SS · AVR128DA28-I/SS |
| ST | TSSOP 14ピン(4.4mm) | PIC16F18426-I/ST |
| PT | TQFP(四方に足、薄型) | PIC18F4550-I/PT · AVR128DA48-I/PT |
| ML | QFN(足のない四角) | PIC16F877A-I/ML |
| L | PLCC | PIC16F877A-I/L |
| MF · MD | 8ピンMLF-S・DFN 4x4 | PIC12F675-I/MF |
| JQ · GZ | UQFN 16ピン・20ピン4x4 | PIC16F18446-I/GZ |
パッケージ名と幅は各データシートのProduct Identification Systemとパッケージ図面のタイトルに書かれた値です(DS39582C・DS41190G・DS40001985C・DS40002183E)。文字はデータシートごとに使うものだけが載っているので、初めて見る組み合わせはそのチップのデータシートで確認します。
3つとも「SOIC」ですが本体の幅が違います。SOは広幅(Wide, 7.50mm・300mil)、SN・SLは狭幅(Narrow, 3.90mm)です。基板のフットプリントが違うため互いに置き換えできません。見積表に「SOIC」としか書かれていなければ、スラッシュの後ろの文字まで確認します。
| 品番 | 梱包 |
|---|---|
| PIC16F18446-I/SS | チューブ(Tなし) |
| PIC16F18446T-I/SS | テーピング・リール |
| AVR128DA48-I/PT | トレイ(Tなし) |
| AVR128DA48T-I/PT | テーピング・リール |
新しいデータシート(DS40001985C・DS40002183E)は“Blank = Tube” / “T = Tape & Reel”と書き、注記で“is not printed on the device package” — Tはチップに印字されないと明記しています。そのためチップだけを見てもリールから出たものかは分からず、リールラベルの品番で確認します。
旧データシートはTが付けられるパッケージを限定しています。PIC16F877Aは“SOIC, PLCC, TQFP packages only”、PIC18F4550は“TQFP packages only”です。PDIP(/P)にTを付けた品番はこれらのデータシートにありません。
| データシート | F電圧 | LF電圧 |
|---|---|---|
| PIC16F877A (DS39582C) | 4.0~5.5V | 2.0~5.5V |
| PIC18F4550 (DS39632E) | 4.2~5.5V | 2.0~5.5V |
| PIC16F18446 (DS40001985C) | 2.3~5.5V | 1.8~3.6V |
旧PICではLFはFより低い電圧まで動作する版です(PIC18F4550データシート: “LF = Wide Voltage Range”)。上限はFと同じ5.5Vです。
PIC16F18446データシート2ページはPIC16LF18446を1.8~3.6V、PIC16F18446を2.3~5.5Vと書き、LFは“lower maximum VDD and I/O voltage than the F devices”と明記しています。昔の感覚で「LFは広電圧だからFの代わりに使える」とすると、5V回路にLFを送る事故が起きます。F・LFは別の品番と考え、そのチップのデータシートの電圧範囲を必ず確認します。
| 旧PIC16F877 | PIC16F877A | |
|---|---|---|
| 注文品番の例 | PIC16F877-20/P | PIC16F877A-I/P |
| 周波数欄 | あり 04・10・20(MHz) | なし |
| 温度の文字 | なし(0~70℃)・I・E | Iのみ |
| フラッシュ書き込み | 1ワードずつ | 4ワード単位 |
| コンパレータ | なし | 2個 |
旧PIC16F87Xデータシート(DS30292D 209ページ)は注文品番に周波数欄があり、PIC16F877-20/P(20MHz, 0~70℃)・PIC16LF876-04I/SO(4MHz, Industrial)・PIC16F877-10E/P(10MHz, Extended)のように数字と温度の文字が付いています。877Aにはこの欄がありません。
877AデータシートのAppendix C(表C-1)は2つのチップの違いをまとめています。ピン数(28/40)とメモリ容量は同じですが、フラッシュの消去・書き込み単位(single-word → four-word blocks)、コンパレータ・比較基準電圧、A/Dクロックの選択が違います。ピンが同じでもファームウェアまでそのまま合うとは限らないので、877を877Aに置き換えるときはお客様側の開発者に確認します。
| 注文品番 | パッケージ | 温度 |
|---|---|---|
| ATmega328P-AU · AUR | TQFP 32ピン(32A) | −40~85℃ |
| ATmega328P-MU · MUR | VQFN 32ピン5x5(32M1-A) | −40~85℃ |
| ATmega328P-MMH · MMHR | VQFN 28ピン4x4(28M1) | −40~85℃ |
| ATmega328P-PU | SPDIP 28ピン0.300インチ(28P3) | −40~85℃ |
| ATmega328P-AN · ANR | TQFP 32ピン(32A) | −40~105℃ |
| ATmega328P-MN · MNR | VQFN 32ピン(32M1-A) | −40~105℃ |
| ATmega328P-PN | SPDIP 28ピン(28P3) | −40~105℃ |
この表はデータシートの注文表そのままです。注記にR = Tape & Reel、MMHのH = NiPdAu Lead Finish(ニッケル・パラジウム・金めっき)と書かれています。ATtiny25/45/85データシートのCode indicatorsは“H: NiPdAu lead finish, U: matte tin, R: tape & reel”で、Uは温度ではなくつや消しスズめっきだと説明しています。105℃版の付録(ATtiny25, 2586N)では同じ位置がN(matte tin, −40~105℃)です。
ATmegaのデータシート自体にはU・Nの説明がなく、ハイフンの後ろの最初の文字(A・M・MM・P)がパッケージだというのも注文表の対応から読み取ったものなので[推定]です。ただし表ではUの行はすべて85℃、Nの行はすべて105℃なので、-AUと-ANを取り違えて送ってはいけません。
| 品番 | 速度・電圧 | パッケージ |
|---|---|---|
| ATtiny85-20PU | 20MHz · 2.7~5.5V | PDIP 8ピン(8P3) |
| ATtiny85-20SU | 20MHz · 2.7~5.5V | SOIC 8ピン0.208インチ(8S2) |
| ATtiny85-20SH | 20MHz · 2.7~5.5V | SOIC 8ピン・NiPdAuめっき |
| ATtiny85-20MU | 20MHz · 2.7~5.5V | QFN 20パッド4x4(20M1) |
| ATtiny85V-10PU | 10MHz · 1.8~5.5V | PDIP 8ピン(8P3) |
| ATtiny85V-10SU | 10MHz · 1.8~5.5V | SOIC 8ピン(8S2) |
ATtiny85の注文表(2586Q 206ページ)はすべて−40~85℃で、-20・-10が速度(MHz)の欄です。Vが付いたATtiny85Vは1.8Vから使える低電圧版です。SUR・SHR・MURのように末尾にRが付くとリールです。
データシート1ページのSpeed GradeはATtiny85を“0 - 10MHz @ 2.7 - 5.5V, 0 - 20MHz @ 4.5 - 5.5V”と書いています。3.3V回路で20MHzで動かすというお客様なら、「-20だから大丈夫」と済ませずにこの条件を伝えます。
またATtiny85のSOIC(8S2)は0.208インチ(約5.3mm)EIAJ幅なので、PIC12F675-I/SN(3.90mm)と同じ「8ピンSOIC」でも本体の幅が違います。
図の説明: カウンターの上にそっくりな28ピンの挿入型部品が2つ置かれ、名札にはATmega328P-PUとATmega328-PUと書かれています。お客様が「Pが1つ抜けただけですよね?」と尋ねると、赤いエプロンをした女性スタッフが「名前の中のPはpicoPower製品、ハイフンの後ろのPはパッケージです。別の品番ですよ!」と答えます。
| どこのP | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ATmega328P (名前の中) | picoPower製品 | ATmega328P-AU |
| -PU(ハイフンの後ろ) | DIPパッケージ [推定] | ATmega328P-PU |
| /P (PICスラッシュの後ろ) | PDIP | PIC16F877A-I/P |
| /SP (PIC・新AVR) | Skinny PDIP 300mil | AVR128DA28-I/SP |
ATmega328Pデータシートは複数の注記で“picoPower devices ATmega48PA/88PA/168PA/328P”と書き、BOD無効化(BODS)などの機能をこのpicoPowerチップだけに持たせています。PがないATmega328-PU・ATmega328-AUは同じデータシートに別の注文表がある別の品番です。「Pが1つ抜けただけだから同じチップ」と考えて置き換えて送ってはいけません。
ATmega328P-PUの28P3は“28-lead, 0.300” Wide, Skinny Plastic Dual Inline Package (SPDIP)”です。同じ300mil 28ピンDIPを、PIC・新AVRは/SP、旧Atmel式は-PUと書きます。逆にPIC16F877A-I/Pは40ピン600mil PDIPです。文字よりもピン数・幅を見ます。
同じ図には、ピン数の後ろにS(PDID機能あり — プログラム・デバッグ接続を防ぐセキュリティ機能)、末尾にVAO(Automotive)が付くことがあると示されています。例: AVR128DA48S-I/PT・AVR128DA64ST-E/PTVAO。VAO品番は要求に応じて作るコードなので注文表にはありません(649ページの注記)。
| 旧Atmel式 | 新Microchip式 | |
|---|---|---|
| 例 | ATmega328P-AUR | AVR128DA48T-I/PT |
| 温度 | ハイフンの後ろの末尾の文字 U・N [推定] | ハイフンのすぐ後ろにI・E |
| パッケージ | ハイフンの後ろの最初の文字 A・M・P [推定] | スラッシュの後ろにPT・SO・SP |
| リール | 末尾にR | ピン数の後ろにT |
同じMicrochipの中でも、ATmega328P(2020年版DS40002061Bを含む)・ATtiny85のデータシートは今も-AU・-PU式、AVR128DAは-I/PT式です。品番の形を見てどちらの規則かを決めて読みます。車載用の旧AVRはさらに違い、ATmega328P-15AZ(TQFP32, −40~125℃, 16MHz)のように書きます(7810D 285ページ)。15・Zの意味はデータシートにありません。
PIC16F877Aデータシートの表示例を見ると、40ピンPDIPはPIC16F877A/P、44ピンTQFPはPIC16F877Aと/PTを2行に分けて印字し、下の行に年・週・トレースコード(YYWWNNN)が入ります。1行に収まらなければ次の行に送ると書かれています。ここにリールを表すTは印字されません(4節)。チップ上面だけで注文品番全体を当てようとせず、袋・リールのラベルも合わせて見ます。
資料: Microchipデータシート — PIC16F87XA(DS39582C)・PIC16F87X(DS30292D)・PIC12F629/675(DS41190G)・PIC18F2455/2550/4455/4550(DS39632E)・PIC16(L)F18426/46(DS40001985C)・ATmega48A/PA/88A/PA/168A/PA/328/P(DS40002061B)・ATmega328P Automotive(7810D)・ATtiny25/45/85(2586Q)・ATtiny25 105℃付録(2586N)・AVR128DA28/32/48/64(DS40002183E)(2026-11-04確認)。旧Atmel式AVRは品番解説図がないため、[推定]表示は注文表から読み取ったものです。実際の注文前には該当品番の最新データシートで確認してください。
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