画像の説明:お客さんが1N4007とUF4007の袋を持って「どちらも1000V 1Aだから、どれでもいいですよね?」と尋ねます。赤いエプロンをつけた女性店員がデータシートのtrrの行を指でさしながら「速さが違います!」と答えます。
ダイオードを別の品番に置き換えるとき、"1000V 1Aならどれも同じ"と考えがちですが、データシートにはそれより多くの値があり、値ごとに条件が付いています。この記事では、Vishayの代表的なダイオードのデータシート7件(一般整流1N4007・超高速UF4007・ショットキー1N5819・SS14・小信号1N4148・ツェナー1N4742A・TVS SMAJ15A)を並べて、どの値をどの条件で比較すべきかを整理しました。
値はすべてVishayの公式データシートとアプリケーションノート(Fundamentals of Rectifiers・Physical Explanation)から引用し、英語の引用符内は原文のままです。品番をクリックするとeGuroの部品検索で在庫を探します。
| 順序 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | VRRM | 耐えられる繰り返し逆電圧(何Vまで) |
| 2 | IF(AV) | 平均順方向電流(何Aまで) |
| 3 | trr | スイッチング回路なら — 逆回復時間(どれだけ速くオフになるか) |
| + | IFSM · VF · IR | サージ電流・順方向電圧・漏れ電流 |
Vishayのアプリケーションノートは、整流ダイオードを選ぶときの主な値を次のように記載しています:“The major parameters for the selection of the appropriate rectifier are the maximum reverse voltage (VRRM), the average forward current (IF(AV)) and for switching application the reverse recovery characteristic (trr) too.” また、データシートの表の見出しにある“TA = 25°C unless otherwise noted”は、特に記載のない値はすべて周囲温度25℃基準という意味です。実際の基板はそれより高温になります。
| 品番 | VRRM(繰り返し逆電圧) | VRMS(交流実効値) | VDC(直流逆電圧) |
|---|---|---|---|
| 1N4001 | 50V | 35V | 50V |
| 1N4004 | 400V | 280V | 400V |
| 1N4007 | 1000V | 700V | 1000V |
| 1N5819 | 40V | 28V | 40V |
VRRMは“Repetitive peak reverse voltage, including all repeated reverse transient voltages” — 繰り返しかかる逆方向の最大電圧です。交流を直接整流すると、実効値ではなくピーク値(220Vなら約311V)がかかります。そのため交流入力では、データシートのVRMS欄がその交流電圧より大きい品番(220VならVRMS 280Vの1N4004以上)を選びます。1N4001〜1N4007は電圧の値だけが異なり、残りの値は同じなので、数字が大きい品番は小さい品番の代わりに使えますが、逆はできません。ショットキーの1N5819はVRRMが40Vで、整流ダイオードよりはるかに低いです。
画像の説明:お客さんがデータシート2枚を並べて持ち「どちらも1.0Aですね!」と言います。女性店員が表の条件欄を指さしながら「条件の温度が違います!」と答えます。
| 品番 | IF(AV) | データシートの条件 |
|---|---|---|
| 1N4007 | 1.0A | リード長9.5mm、周囲温度TA = 75℃ |
| UF4007 | 1.0A | リード長9.5mm、周囲温度TA = 55℃ |
| 1N5819 | 1.0A | リード長9.5mm、リード温度TL = 90℃ |
| SS14 | 1.0A | リード温度TL — 数値なしでグラフ(fig. 1)のみ |
| 1N4148 | 150mA | VR = 0 |
3つの品番はいずれも"1.0A"ですが、どの温度での1.0Aなのかが異なります。温度がそれより上がると流せる電流が減り、この減り方を示すのがデータシートのForward Current Derating Curve(電流ディレーティング曲線)のグラフです。アプリケーションノートはIF(AV)を“Average forward output current, at a specified current waveform … a specified reverse voltage and a specified mounting condition (e.g. lead-length = 10mm or PCB mounted with certain pads and distance)”と定義しています — 波形・逆電圧・実装方法まで決められた値という意味です。
| 品番 | IFSM | 条件 |
|---|---|---|
| 1N4007 | 30A | 8.3ms半波1回(60Hz半周期) |
| UF4007 | 30A | 8.3ms半波 |
| 1N5819 | 25A | 8.3ms半波 |
| SS14 | 40A | 8.3ms半波 |
| SMAJ15A | 40A | 8.3ms半波、単方向のみ |
| 1N4148 | 2A | tp = 1µs (100万分の1秒) |
IFSMは、電源を入れたときにコンデンサが充電されて一度に大きく流れる突入電流のような瞬間的な電流に、どれだけ耐えられるかを示します。アプリケーションノートは“It is not an operating value.”と記載しています — 流し続けてよい値ではありません。整流ダイオードは8.3ms半波基準ですが1N4148は1µs基準なので、数字だけを比較してはいけません。
| 品番 | VF最大 | 条件 |
|---|---|---|
| 1N4007 | 1.1V | 1.0A |
| UF4007 | 1.7V | 1.0A(UF4001〜4004は1.0V) |
| 1N5819 | 0.600V | 1.0A(表に単位なしで“1.0”) |
| SS14 | 0.50V | 1.0A(SS15・SS16は0.75V) |
| 1N4148 | 1V | 10mA |
| 1N4742A | 1.2V | 200mA(ツェナーの順方向) |
VFは電流が流れるときにダイオードの両端にかかる電圧で、VF×電流=熱になります。1Aを流すと、1N4007は最大1.1W、ショットキーの1N5819は最大0.6Wが熱として出ます。ショットキーを使う最大の理由がこの低いVFです。VFは何Aで測った値かも一緒に見る必要があり、ほとんどが“Pulse test: 300µs pulse width, 1 % duty cycle” — 短いパルスで測った値(チップが温まる前)です。
| 品番 | 25℃ | 高温 |
|---|---|---|
| 1N4007 | 5.0µA | 50µA (125℃) |
| UF4007 | 10µA | 50µA (100℃) |
| 1N5819 | 1.0mA | 10mA (100℃) |
| SS14 | 0.2mA | 6.0mA (100℃) |
| 1N4148 | 25nA (20V) | 50µA (20V, 150℃) |
IRは逆方向で阻止しているときに漏れる電流です(すべて定格逆電圧での値)。ショットキーは一般整流より漏れが数百倍大きく、温度が上がるとさらに10倍ずつ大きくなります。電池機器のように待機電流が重要な場所や、高温の場所にショットキーを使うときは、この値を必ず確認してください。ショットキーの1N5819は最高接合部温度も125℃と低いです(9章)。
| 区分(Vishayアプリケーションノート) | trr | 例 |
|---|---|---|
| Standard(一般整流) | 500nsより長い | 1N4007 — データシートにtrrの項目自体がない |
| Fast(高速) | 100 ~ 500ns | |
| Ultrafast(超高速) | 100nsより短い | UF4007 75ns(UF4001〜4004は50ns) |
| Schottky(ショットキー) | 構造が異なり回復時間がほとんどない | 1N5819 — 表にtrrなし、“Extremely fast switching” |
| 小信号スイッチング | 1N4148 4ns・8ns(2つの条件) |
ダイオードはオンの状態から逆方向に切り替わるとき、すぐにはオフにならず、一瞬逆向きに電流が流れます。その時間がtrrです。50・60Hzの商用電源の整流には1N4007のように遅くても問題ありませんが、スイッチング電源(SMPS)・DC-DCコンバータのように数十kHz以上では、遅いダイオードは発熱します。そのため1N4007の代わりにUF4007はたいてい使えますが、UF4007の代わりに1N4007は使えません。trrにも条件が付いており、UF4007は“IF = 0.5A, IR = 1.0A, Irr = 0.25A”です。
| 品番 | 値 | 条件 |
|---|---|---|
| 1N4007 | CJ 15pF(代表値) | 4.0V, 1MHz |
| UF4007 | CJ 17pF(代表値) | 4.0V, 1MHz |
| 1N5819 | CJ 110pF(代表値) | 4.0V, 1MHz |
| 1N4148 | CD 4pF(最大) | 0V, 1MHz |
CJ(接合容量)は“Capacitance due to a pn junction of a diode which decreases with increasing reverse voltage.” — 逆電圧が大きいほど小さくなります。1N4148はCD(ダイオード全体の容量、パッケージを含む)で記載しています。高周波信号・スイッチングではこの容量が小さいほどよく、ショットキーは容量が大きい方です。
| 品番 | RθJA(接合部→空気) | RθJL(接合部→リード) | 接合部温度 |
|---|---|---|---|
| 1N4007 | 50℃/W | 25℃/W | −50 ~ +150℃ |
| UF4007 | 60℃/W | 15℃/W | −55 ~ +150℃ |
| 1N5819 | 50℃/W | 15℃/W | −65 ~ +125℃ |
| SS14 | 88℃/W | 28℃/W | −65 ~ +150℃ |
| 1N4148 | 350K/W | 最高175℃ | |
| SMAJ15A | 120℃/W | 30℃/W | −55 ~ +150℃ |
RθJA 50℃/Wは、1Wを熱として出すとダイオード内部が周囲より50℃高くなるという意味です。この値にも“9.5mmリード・PCB実装・銅パッドの大きさ”のような条件が付いており、基板のパッドを小さく設計するとさらに高温になります。
| ツェナー 1N4742A | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| VZ | 12V(公称) | IZTで測ったツェナー電圧、許容差±5%(“Standard Zener voltage tolerance is ± 5 %”) |
| IZT | 21mA | VZを測った試験電流 |
| ZZT | 最大9Ω | IZTでの動作抵抗(小さいほど電圧が安定) |
| Ptot | 1300mW | リード4mmを周囲温度に保ったとき |
| IR | 5µA (9.1V) | ツェナー電圧より低いときの漏れ |
| TVS SMAJ15A | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| VWM | 15V | 常時かかっていてもよい電圧(これ以下ではほとんど流れない) |
| VBR | 16.7 ~ 18.5V (1mA) | 電流が流れ始める電圧 |
| VC | 最大24.4V(16.4A) | サージが入ったときに抑え込む電圧 |
| IPPM | 16.4A | 耐えられるサージ電流(10/1000µs波形) |
| PPPM | 400W | サージ瞬時電力(10/1000µs) |
| 捺印 | 単方向BM・双方向XM | チップ上の文字 — 双方向は品番末尾にCA(“For bidirectional use CA suffix”) |
ツェナーはVZをどの電流(IZT)で測ったか、TVSは保護する回路の電圧≤VWMであり、VCが保護する部品の耐電圧より低いかを見ます。SMAJは単方向なら帯がカソード側で、“no marking on bidirectional types” — 双方向は極性の帯がありません。ツェナーの品番別の電圧は、ツェナー電圧コードの記事で別途まとめています。
| 値 | 1N4007 整流 | UF4007 超高速 | 1N5819 ショットキー | 1N4148 小信号 | SMAJ15A TVS |
|---|---|---|---|---|---|
| パッケージ | DO-41 | DO-41 | DO-41 | DO-35 | SMA |
| VRRM | 1000V | 1000V | 40V | 100V | VWM 15V |
| IF(AV) | 1.0A (TA 75℃) | 1.0A (TA 55℃) | 1.0A (TL 90℃) | 150mA | - |
| IFSM | 30A | 30A | 25A | 2A (1µs) | 40A |
| VF最大 | 1.1V | 1.7V | 0.600V | 1V (10mA) | 3.5V (25A) |
| IR 25℃ | 5µA | 10µA | 1.0mA | 25nA (20V) | 1.0µA |
| trr | 表になし | 75ns | 表になし | 4 · 8ns | - |
| 接合部温度 最高 | 150℃ | 150℃ | 125℃ | 175℃ | 150℃ |
すべてVishayのデータシートの最大値(容量は代表値)。“-”はその種類に該当しない値、“表になし”はデータシートに項目がない値です。
資料:Vishay 1N4001 (88503, 2020-04-29)・UF4001 (88755, 2020-04-06)・1N5817 (88525, 2020-07-01)・SS12 (88746, 2020-04-23)・1N4148 (81857, Rev. 1.6)・1N4728A (85816, Rev. 2.7)・SMAJ5.0A (88390, 2024-01-09)データシート、アプリケーションノート Fundamentals of Rectifiers (88867)・Physical Explanation (84064)。同じ品番でもメーカーごとに値と条件が異なる場合があるので、実際に使用するメーカーのデータシートで確認してください。
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